セミ・スラヴ・ディフェンス

クローズドゲームの定跡の一つであるスラヴ・ディフェンスからの変化の中でも非常に出現頻度の高い形がこのセミ・スラヴ・ディフェンス(またはセミスラブディフェンス)です。筆者が最初にチェスに興味を持った棋譜であるピーター・ウェルズVS羽生善治の戦形もこのセミ・スラヴ・ディフェンスでした。
日本では多くの場合セミ・スラヴと略して呼ばれます。このページでも以下はセミ・スラヴとします。
セミ・スラヴまでの手順は 1. d4 d5 2. c4 c6 3. Nf3 Nf6 4. Nc3 e6 というのが一般的ですが多少の手順前後で同形になることも少なくありません。例えば白が3手目でNc3と左のナイトを先に出すパターンもあれば黒が3手目にe6とする場合もあります。どの手順でも同じ形に合流していればセミ・スラヴとして扱います。

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セミ・スラヴ基本形まで

初手からセミ・スラヴ基本形までです。

1. d4 d5 2. c4 c6
ここまではスラヴ・ディフェンスの基本形です。それぞれの手の意味についてはスラヴ・ディフェンスのページで解説しています。

3.Nf3 Nf6
白の3手目はNf3がほとんどです。e3やNc3もありますが、e3の場合だとセミ・スラヴにはなりません。ここでは本筋のNf3とします。
黒はこれに対してNf6かe6とします。ここではNf6としますが、もしe6とすれば4.Nc3 Nf6と手順前後でセミ・スラヴになります。

4.Nc3 e6
白の4手目はNc3とナイトを活用するのが本筋です。他にもQc2やQb3などクイーンを活用する手もあります。ここでは本筋に従います。
これに対し黒はdxc4と取るかe6とするかですが、セミ・スラヴを選択しますのでe6とします。dxc4に関してはスラヴ・ディフェンスのページで紹介しております。

ここまででセミ・スラヴの基本形になりました。この先は白がe3とするかBg5とするかの変化ですが、今回はe3からのメラン・バリエーションと呼ばれる変化を紹介いたします。

メラン・バリエーション

セミ・スラヴ以下の変化です。

 

5.e3 Nbd7
白のe3という手はc4のポーンを守るため白マスのビショップの筋を通した手です。一方で黒マスのビショップがg5に展開するのを妨げる手にもなってしまっています。Bg5とする場合はc4ポーンを犠牲にする代わりに黒マスビショップの展開を優先するという手になります。
これに対する黒の本筋の手はNbd7となります。他にもBd6やBe7等も考えられますがめったにさされることはありません。

6.Bd3 dxc4
白のBd6の手でメラン・バリエーションと呼ばれる定跡に入りました。他にはアンチ・メランと呼ばれるQc2もあります。
黒はdxc4と指すのが多いですが、最近はBd6という手がかなり多いようです。ここではメラン・バリエーションの本筋であるdxc4とします。

7.Bxc4 b5 8.Bd3 a6 9.e4 c5 10.e5
7手目以降はこのように進むのがメラン・バリエーションとしては本筋という一例です。分岐としては白の8手目でビショップが逃げる場所がBd3ではなくBe2やBb3と言ったのも考えられますがあまり指されません。

ただ、以下で紹介するピーター・ウェルズvs羽生善治戦の棋譜はそのあまり指されない白8手目Be2という分岐を辿っています。

セミ・スラヴの一例

2005年に行われた試合です。
白はグランドマスターであるイギリスのピーター・K・ウェルズ氏(Peter K Wells)、対して黒はプロ将棋棋士として当時三冠を保持していた羽生善治三冠です。
結果は後手番の羽生さんが勝った試合ですがその内容が凄まじく、一時的にビショップとルーク損という大きな駒損のままチェックメイトまで持って行ってしまいます。
戦形は黒の7手目b5までは上記のメラン・バリエーションとして進んでいましたが、白が8手目でBd3ではなくBe2とした変化を選択しました。結果的にこのビショップが最後の方まで動くことなくさらにタダで取られているので、白のBe2を黒がうまく咎めた形となりました。

 

最終手以降はキングはb1にしか逃げ場はありませんが、ポーンを進められてチェックメイトです。b3のクイーンはルークでピンされており動けません