チェスにおける駒の動きに関する特殊なルール2つのうちの1つがこのキャスリングです。
1手でキングをより安全な壁側に、そしてルークをより攻撃的な中央へと移動させるこのルールは、チェスをよりエキサイティングなゲームにするために14世紀~15世紀頃に考案されたといわれています。
動きで見れば一発でわかるこのルールも文字で見るといまいちわかりづらいため図を交えながら見ていきましょう。
ちなみに駒の動きに関する特殊ルールのもう1つはアンパサンです。
キャスリングの動き
まずはキャスリングの動きを実際に動かしながら見てみましょう。
1. e4 e5 2. Nf3 Qe7 3. Bb5 Nc6 4. O-O d6 5. Re1 Bg4 6. Nc3 O-O-O
白の4手目と黒の6手目がキャスリングという動きです。言葉では説明しづらくても恐らくどのような動きかわかったと思います。
キャスリングの種類
キャスリングには大きく分けて2種類あり、白番の場合を例にとると右側のルークとキャスリングを行うキングサイド・キャスリング(ショート・キャスリングとも)と、左側のルークとキャスリングを行うクイーンサイド・キャスリング(ロング・キャスリングとも)があります。
上記の例では先手の白がキングサイド、後手の黒がクイーンサイドを行っております。どちらが優れているというわけでなくどちらを使うかは場合によりけりです。
キャスリングができる条件
ここまでキャスリングの動きを見てきましたがいつでもできるわけでなくきちんと条件があります。以下の条件をすべて満たした場合のみキャスリングを行うことができます。
- キングとキャスリングをするルークが共に一度も動いていないこと。
- キングとキャスリングをするルークの間に駒が無いこと。
- キングにチェックがかかっていないこと。
- キングが通過するマスに敵の駒の攻撃判定がかかっていないこと。
- 同じランクにキャスリングするキングとルークがいること。
4と5が少しわかりづらいので補足いたしますと以下の通りです。
4.キングの通過するマスに攻撃判定がかかっていない
5.同じランクにキャスリングするキングとルークがいること。
キャスリングするルークはキングと同じランク(同じ横の列)にいる必要があります。
そんなの条件1から「ルークもキングも一度も動かなければ絶対同じランクじゃないか」と思うかもしれません。
しかしポーンのプロモーションでeの列でルークができた場合には、そのルークになってからは一度も動いていない状態になります。
つまり上記の1から4の項目を満たすことができるため、5の条件がなければ縦方向の面白キャスリングができてしまうというわけです。
これが5の条件がなければできてしまうのです
ちなみにこの条件は1972年にFIDEに採用されるまでは公式戦でも縦方向のキャスリングはルール上することができました。
というのもそれまでは縦方向のキャスリングができることは見落とされており、Max Pamという人が発見し、1972年にチェスプロブレムの中で発表したことで知られるようになったからです。
ただし実際には1907年にデンマークのチェスプレイヤーによって発見されていたようです。
参考リンク:パム・グラッベのキャスリング(独.wikipedia)
その他の注意点
インターネットでギコチェスと遊んだり、スマホのチェスヒーローズで対人戦を行うなど実際の駒を触らない場合は関係ないのですが、実際に駒を使う場合に少しだけルールがありますので紹介しておきます。
1.キャスリングは片手で行うこと
両手で行った場合どうなるかは知りませんが、見た目で言えば将棋で駒を成る時に両手を使うぐらい不格好な感じなんじゃないでしょうか。
2.キャスリングをするときはキングから動かす
先にルークを触った場合、キャスリングしてはいけません。