チェスは将棋と比べ引き分けとなることが非常に多く、実力が均衡する者同士が当たると10連続以上引き分けということもあります。
チェスで引き分けになるのは以下の5種類です。
「1.ステイルメイト」「2.スリーフォールド・レピュテーション(千日手)」「3.戦力不足」「4.合意の上での引き分け」「5.50手ルール」
これらをそれぞれ見ていきましょう。
ステイルメイト
ステイルメイトとは、キングにチェックがかかっていない状態で動かすことができる駒が一つもなくなった状態のこと言います。
キングにチェックがかかった状態で動けない場合はチェックメイトとなり、チェックをかけている側が勝ちです。
例えば以下の形が最も多くあらわれるステイルメイトの終了図です。手番は黒番です。

黒のキングにはチェックがかかっていないものの、動かせる場所がありません。
ルール上、キングを自分からチェックされに行くのは反則だからです。
上図の場合は黒は何もできないためステイルメイトとなり、引き分けとなります。
また圧倒的に大差があっても、間違って以下のような形になってしまうと引き分けとなります。手番は黒番。

この図では白が圧倒的に有利なのですが、間違って黒番の駒がどれも動けない形にしてしまいました。
実践でも圧倒的に不利な状況から、自分の駒をわざと相手に取らせて動かせる駒をなくすことで、ステイルメイトを作り出し、負けの試合を引き分けに持って行くというテクニックがあります。
ちなみに将棋では取った駒が再利用できる関係で、指せる手がないということにはなることは普通はありませんが、同じようにステイルメイトが成立した場合については特に規定はされていません。
ゲームなどの設定では、一般的に指す手がなくなった側が負けとなることが多いようです。
スリーフォールド・レピュテーション(千日手)
スリーフォールド・レピュテーション(千日手)とは、盤上に3度全く同じ駒の配置が現れることです。
特に連続チェックでのスリーフォールド・レピュテーションのことをパーペチュアルチェックと呼びます。
どちらの場合でもチェスでは引き分けとなります。
同じ配置が現れる順番は連続で3回である必要はありません。合計で3回です。
ちなみに将棋では連続王手の千日手、つまりパーペチュアルチェックは王手をしている側の負けとなります。
戦力不足
お互いの駒が少なくなりすぎて、絶対にどちらも相手をチェックメイトできない状況になった場合には引き分けとなるルールです。
具体的には両者の駒が以下のものだけになった場合が戦力不足で引き分けとなります。
- キング対キング
- キング対キング+ビショップ1個
- キング対キング+ナイト1個
- キング+ビショップ対キング+ビショップ(どちらのビショップも同じ色のマスの場合)
最後のキング+ビショップについては、お互いのビショップが同じ色のマスを動くビショップである限りは、ビショップの数に制限はありません。
しかしポーンがプロモーションしてわざわざビショップにならない限りは2個以上にはなりません。
両者合意での引分け
一方が相手に対して引き分けを提案し、相手がそれを了承すれば引き分けが成立するというルールです。
上位選手同士であれば、ある程度の段階で引き分けになりそうだなというのがお互い分かります。
そのため無駄な時間を使うまでもなく合意の上で早めに引き分けにしてしまおう、というルールです。
ただしこの引き分けの提案が心理戦に使われることもあります。チェスが強いことで有名なプロ将棋棋士の羽生善治氏は書籍の中で以下のように述べています。
チェスならではの面白いルールに「引き分け提案」というものがあります。これは、勝負がつかずに引き分けになりそうだなと思ったときに、相手に引き分けにしようと提案して、相手が同意すれば引き分けになるというルールです。チェスは将棋と違ってよく引き分けが発生するんです。
ところが、これを駆け引きに利用して、形勢が悪いと思っているほうが、わざと引き分けを提案することがあるんです。相手は当然断るわけですが、断ったからには勝たなくては、というプレッシャーがかかることになる。その結果、ミスが出やすくなることを狙う作戦です。これなども将棋では考えにくいシビアな戦い方ですね。
出典:「教養としての将棋」より羽生善治氏
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関連ページ:チェスプレイヤーとしての羽生善治
50手ルール
チェスの50手ルールとは、過去50手の間に白黒どちらのポーンが一度も動かず、さらに駒の取り合いが1度も行われなかったとき、その試合は引き分けとなるルールです。
過去50手というのは初手からではなく、どこの間でも50手連続でポーンが動かず、駒が取られなければ引き分け、という意味です。
チェスの50手は、白が50回と黒が50回指すことを言います。将棋でいうと100手です。
その間に一度もポーンが動かない上に駒が取られないとゲームとして成り立たない可能性があるので引き分けにしましょう、というのがこのルールです。
ちなみに残りの駒が少なくなった場合に、確実にチェックメイトまで追い込めるがお互い最善手を指すと、駒の取り合いがないまま50手以上かかる場合があることがわかっています。
豆知識
220万もの棋譜データを解析したA Visual Look at 2 Million Chess Gamesという記事によると、引き分けの発生確率は31.4%だそうで、黒番の勝率の29.8%よりも高くなっています。
また初心者はポーン一個残った状態でステイルメイトをきちんと決めきる練習も必要です。練習しておかないと、ポーンのプロモーションを許してしまい、引き分けにできた対局で負けてしまいます。
練習には外部サイト「チェス入門」さんのステールメイトに持ち込むのページがオススメです。