ネットフリックスオリジナルドラマ「クイーンズギャンビット」の第七話に出てくるチェス用語やチェスに関する発言について解説していきます。
レビューや感想ではないのでストーリーのコア部分についてのネタバレはありません。
用語
タイトル:エンドゲーム
チェスの試合の展開は序盤(オープニング)、中盤(ミドルゲーム)、終盤(エンドゲーム)に大まかに分けることができます。
クイーンズギャンビットの第一話のタイトルがオープニング、第四話がミドルゲーム、そして最終話がエンドゲームです。
最終話なのでエンドゲーム、そのまんまです。
チェス連盟
チェス連盟とは、各国に1組織ある国ごとのチェス連盟と、その各国のチェス連盟をまとめる国際チェス連盟(FIDE)の2種類があります。
劇中で話が出てくるチェス連盟は基本的にはアメリカのチェス連盟であるアメリカ合衆国チェス連盟(USCF)のことを指しています。
それぞれのプレイヤーが国際大会に出るためには、必ずどこかの国のチェス連盟に所属しなければなりません(自国でなくてもよい)。
ちなみにチェス連盟は1カ国に1組織と決まっているので、先にその国にFIDEから認められたチェス連盟があった場合、例えそれがおばあちゃんが一人で運営していてお金の流れもよく分からない個人事業みたいな組織だったとしても、新たにFIDEに認められるチェス連盟をその国に作ることはできません。(そんな組織なんてあるわけないですけどね!)
関連ページ:悪評高い日本チェス協会とは何だったのか
ソ連の路上でおじいちゃん達が野良試合
ベスがソ連でおじいちゃんたちが路上でチェスをしているのを見て、アメリカとのチェスの人気の違いを感じているシーンがあります。
第七話は1968年という設定で、実際の世界のアメリカではボビー・フィッシャーが引退するする詐欺で世間を騒がせているころです。
その4年後の1972年、ボビーが世界王者になったのをきっかけにアメリカのチェスブームが起こるため、68年の頃はまだまだチェス人口はそこまで多くなかったのです。
参考にアメリカ合衆国チェス連盟(USCF)の会員数の変化でいうと、60年に4000人程度だったのが68年頃は2万人程度に増え、そしてボビーが世界チャンピオンになった次の年の73年には5万人にまで増えています。
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クイーンズギャンビット
最終話にきてようやくドラマ名である戦型「クイーンズギャンビット」の解説です。
クイーンズギャンビットは、先手が1手目にクイーンの前のポーンを2マス進め、後手もクイーンの前のポーンを2マス進めて、先手が2手目にクイーンの隣のビショップの前のポーンを2マス進めた形のことを言います。(以下の図)
ギャンビットとは、ポーンを相手にタダで取らせる代わりに、何かしらで有利を取ると言う作戦に用いられる名称です。
代表的なものとしてはクイーンズギャンビット、キングスギャンビット、ラトビアンギャンビットなど。
今回はクイーン側(真ん中より左側)でビショップの前のポーンを相手にタダで取らせる代わりに、中央付近のポーンの数で上回ることで相手よりもポジション的に有利になろうという作戦です。日本的には「肉を切らせて骨を断つ」的な作戦と言えばわかりやすいでしょうか。
いろいろなものの犠牲や代償の上に勝利を積み重ねてきたベスを象徴する戦型です。
関連ページ:【チェス用語】なんとかギャンビットってどういう意味?
使われている棋譜に関して
ドラマの中でベスや他のプレイヤーが指している手は、過去にあった実際の試合の棋譜を再現しているものが多くなっています。
ベスが再現していたのは、ポール・モーフィー、ボビー・フィッシャー、ガルリ・カスパロフなどの棋譜です。
プレイヤーそれぞれに棋風と呼ばれる指し方の個性があるのですが、ここで挙げた人たちは自分の先読みの力に自信があるので、万が一読み間違えていれば危険な手順でも踏み込むタイプであり、ベスに設定されている性格そのものです。
もし現実に自分の実力でそれだけの棋譜を残せる女性プレイヤーがいたとしたら、チェスの歴史上最強の女性プレイヤーとなるでしょう。
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まとめ
運転手「チェス選手?女優みたいだな」
思わぬところからメタ発言が飛び出してくるドラマでした。
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