チェスのオープニングのフレンチディフェンスについてです。
白は中央付近の制圧を狙うのに対し、黒は白の中央付近の攻めを緩和させながらクイーンサイドへの駒の展開を意識した形を取ります。
ただし黒は序盤では全体的に駒が使いづらく少し窮屈で、特にe6としたポーンがc8のビショップの展開の邪魔になることがしばしばです。
黒が中央にポーンを残しながら、白の中央のポーンをクイーンサイドのポーンと交換できれば黒が勝ちやすく、逆に中央を白が制圧し、黒が思うように駒を展開できなければ白が勝ちやすくなります。
基本形までの手順と意味
基本形まで
1.e4 e6 2.d4 d5
1.e4 e6がフレンチディフェンスと呼ばれる形ですが、そのあとはほぼ2.d4 d5と進むので、ここまでを基本形として載せておきます。
それぞれの手の意味
白1手目 e4
キングの前のポーンの突き出しです。中央制圧を狙うことと同時にクイーンとビショップが動けるようになり白の盤面上の制圧範囲が一気に広がりました。
黒1手目 e6
黒も駒の動きを広げるためキングの前のポーン突き出しますが、e5ではなくe6へ1マスだけ動かします。
これは次にd5を狙っており、白からexd5と取られたときにできればクイーンで取りたくないのでe6で支えるというわけです。
クイーンを最初の段階で中央付近に繰り出すと、相手に駒を展開されながらクイーンを追い掛け回されるので、セオリーとしてはクイーンは序盤ではあまり前に出さないほうが良いとされています。
白2手目 d4
ポーンe4として中央で並べ、ファランクスと呼ばれる形を形成しました。
黒1手目 d5
中央にポーンを並べられるのは形が良すぎるので、ポーンd5とぶつけて早速崩しに行きます。
この先の展開は白の対応により以下のように名前が付いています。
- 3. Nc3 Bb4:ワイナウアー・バリエーション(このページで解説)
- 3. Nc3 Nf6:クラシカル・バリエーション
- 3. Nc3 dxe4:ルビンシュタイン・バリエーション
- 3. exd5 exd5:エクスチェンジ・バリエーション
- 3. Nd2:タラッシュ・バリエーション
- 3. e5:アドバンスドバリエーション
基本形からの主な変化
基本形からの変化としてはワイナウアーバリエーションとクラシカルバリエーションが良くあらわれますが、ここでは前者を見ていきます。
ワイナウアー・バリエーション(3. Nc3 Bb4)
1.e4 e6 2.d4 d5 3. Nc3 Bb4がワイナウアーバリエーション。
このバリエーションが最もフレンチディフェンスでは指されている戦形です。
3. Nc3 Bb4
白はNc3とナイトを跳ねてd5の部分とe4の部分に攻撃判定をプラスしますが、黒はこのナイトをビショップで動けにないようにピンします。
4. e5 c5
ナイトが動けないのでe4のポーンを突いて逃がすとともに、相手のナイトが出られないようにf6の部分に攻撃判定を伸ばします。
黒は、白のe5ポーンを支えているd4ポーンを動かしてポーンチェーンを切りに行きます。
またこのバリエーションでは黒はクイーンサイドが開けていて、白は中央が厚いので、黒としては中央よりもクイーンサイド側で争いが起こるように仕向ける意図もあります。
5. a3 Bxc3+
白は、d4のポーンは取られても取り返せるので無視しつつ、相手のビショップがナイトをピンしたままなのでこれを外しに行きます。
黒はビショップを切って、白にダブルポーンの形を作らせに行きます。
6. bxc3 Ne7
白はチェックがかかっているのでビショップを取る以外選択肢はありません。
黒はナイトを展開しつつ、キャスリングの準備をします。
勝率
lichess.comによると、フレンチディフェンスの勝率は先手:35%、後手24%、引き分け41%です(サンプル数121153)。
また派生先の勝率としては、ワイナウアーバリエーションが先:後:引=38:25:37、クラシカルが34:23:43となっています。
関連ページ:【チェスの定跡】オープニング一覧