大人気小説ハリー・ポッターシリーズの映画化第一弾がハリーポッターと賢者の石です。
その映画の中で賢者の石を守るために、副学長のマクゴナガル先生が用意していたのが巨大魔法使いチェスです。
そしてハリー達3人は先に進むためにこの魔法使いチェスと対局をすることになるのですが、この対局内容については物語中では触れられていない(触れる必要もない)ためここで解説してみました。
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棋譜と手の解説
どんなシーンだったか覚えてらっしゃらない方はYouTubeで見直してみましょう。
この対局の途中の棋譜は残念ながら公開されていないため不明です。
チェスの監修をしたIMのジェレミー・シルマンさんのブログ(現在閲覧不可)には映画で登場するシーンの1手前(将棋基準なら2手前)からの手順と、それぞれの手の映画の演出上の意味の解説も載っていました。
その部分から一手ずつ見ていきましょう。
白:Qxd3(映画で写っていない手)
ハリー、ロン、ハーマイオニーの位置はそれぞれ図の通りです。
次に黒のロンにNh3とされると、白の魔法使いチェスは即詰みで負けとなる状態です。
白はこれを解除しつつ、a3のビショップ(ハリー)を次に取れるポジションにクイーンを移動させます。
作者はこの後の展開でクイーンを悪役にしたかったので、この手を選んだと語っています。(後述しますが最善手ではない)
黒:Rc3(映画で写っていない手)
ルークをサクリファイスします。狙いは次にハリービショップをルークのいたc5へ移動させることによるチェックメイトです。
白はこのルークをクイーンで取ると詰みなので取ってはいけませんが・・・
白:Qxc3
この手からが映画のシーンで写っている手です。
が、映画に映った初手からいきなり大悪手です。演出上仕方ありませんが、白番の負けが確定しました(詰みが発生)。
ただもともと大幅に黒有利の局面なので、違う手を指していても普通に指せば黒が勝ちます。
ちなみにこの手以外の場合は、ロンも相手も最善手を指すとするとハーマイオニーがどこかで犠牲になります。
黒:Nh3
ハリー「Wait a minute….(ちょっと待てよ。。。)」
ハリーが気付きます、ロンか自分かが犠牲になれば相手が詰むことに。
ロンは自分を犠牲にする手を選びました。実はここでの最善手はBc5、すなわちハリーを犠牲にする手です。
どちらを選んでも勝ちですが、ハリーを犠牲にした方が一手早く詰ませられます。
白:Qxh3(ロンのナイトが倒される)
ゲーム的にはもう終わっています。黒番はこの手以外は選択の余地がありません。
黒:Bc5
ハリーがc5へ歩いて移動して詰みです。
一応クイーンをe3に移動させて合駒できるのでもう一手伸びますが、結果は変わりません。
終局図
詰んでいるので白番は降参せざるを得ません。
連続サクリファイスが決まって気持ちのいい勝ちです(ロンの犠牲がなければ)。
白の最善手
実は初期局面(映画に移っていないところ)での最善手は、Qxd3ではなくQf1でした。
これならば相手からの詰み手順を回避しながら、キングの動きを狭めているルーク(ハーマイオニー)を排除しに行くことができます。
とはいえ、この場合でも普通に指せば黒が勝ちです(ハーマイオニーは犠牲になりますが)。