チェスのレーティングの仕組みと、2019年の世界および日本のプレイヤーランキングについてです。
世界中で広く親しまれているボードゲームであるチェスにおいて、プレイヤーの実力を示す数値がレーティング、そしてそれを元に順位づけをしたものがランキングです。
チェスは運が介在しない対戦型のボードゲームですので強い弱いという概念がはっきりとあるゲームの一つです。
レーティング(またはレイティング)はその強さを分かりやすく表すことができるものであり、そのプレイヤーの強さ=レーティング値と言っても過言ではありません。
そして全世界のプレイヤーのランキングはこのレーティングを元に構成されています。それぞれについて詳しく見ていきましょう。
レーティングとは?その仕組み
レーティングとはプレイヤーの強さを数値化したもので、レーティングが高いプレイヤーがほぼイコールでチェスが強いプレイヤーということになります。
一般的にチェスにおけるレーティングは「Eloレーティング」と呼ばれる計算方法を用いるレーティングの事を指し、対局毎にまたは大会毎の勝敗に基づいて変化していきます。
チェスの国際的な機関であるFIDEが用いているレーティングもこのEloレーティングですので、FIDEに登録されれば初心者から世界チャンピオンまで同じ計算方法で実力を算出されます。
レーティング値の変化についても、簡単に言ってしまえば勝てば上がり負ければ下がります。
また同じ1勝であっても実力が上の相手に勝てば上昇幅も大きく、実力が下の相手に勝っても上昇幅はあまり大きくありません。
負けた場合はその逆で、自分よりも強い相手に負けてもあまり下がりませんが、実力が下の相手に負けると大きく下がります。
国際チェス連盟(FIDE)のレーティングの目安は以下の通りです。
GM = グランドマスター
IM = インターナショナルマスター
FM = FIDEマスター
CM = キャンディデイトマスター
詳しい計算方法については後ほど解説いたします。
世界ランキングと日本ランキング
レーティングがまだついていない新規のプレイヤーは、FIDEの公式大会や公式戦に出場し、FIDEにレーティングが登録されているプレイヤーと対局を行うことで獲得することができます。
レーティング値の更新は、公式で認められた大会などで、レーティングを保持しているプレイヤーと対局を行い、それをFIDEに報告することで更新されて行きます。
そしてそのレーティングごとに順位付けしたのがランキングという訳です。
FIDEのホームページでは世界ランキングの他に国別のランキングも見ることができ、もちろん日本のランキングも見ることができます。
以下が2019年12月時点での世界ランキングと日本ランキングです。
世界ランキング
c 2019FIDE
2019年12月時点でのトップは2872ポイントでマグヌス・カールセン氏です。
スヴェン・マグヌス・エーン・カールセン(Sven Magnus Oen Carlsen)氏はノルウェー生まれのグランドマスターであり歴代最強のチェスプレイヤーとも言われています。
5歳のころにチェスを覚え、13歳でグランドマスターに、そして19歳でFIDEランキング世界1位になりました。
19歳と32日での世界ランク1位獲得は歴代最速であり彼がいかに天才であるかわかると思います。
そして22歳の時には当時の世界チャンピオンであるインドのアナンドに競り勝ち世界チャンピオンの座につきました。この若さでの世界チャンピオンはガルリ・カスパロフ氏と並び歴代1位の若さです。(誕生月まで考えるとカスパロフ氏の方が半年ほど早い)
*注:チェスの場合、レーティングでの世界ランキング1位と世界チャンピオンは別物で、その時の世界チャンピオンに勝ったプレイヤーが新しいチャンピオンになります。ですのでランキングが1位ではないチャンピオンもありえます。
ちなみに歴代レーティングの最高値記録もマグヌス・カールセン氏が保持しており、これが歴代最強といわれる一つの所以でもあります。
最新のトップ選手たちの詳細についてはこちらで解説しています。
→【2020年最新版】世界のチェスのレートランキング【最強のグランドマスター達】
カールセン氏については個別記事があります。
日本ランキング
c 2019 FIDE
2019年12月時点でのトップは2421ポイントで中学生の岡玄(オカヒカル)氏、それに続きプロ将棋棋士の羽生善治氏、そしてトップ3の常連の小島慎也氏が続いています。
トップの岡玄氏は2019年に突如としてランク1位に現れた選手です。
幼少の頃よりオーストラリアに住んでいて、日本には最近になり戻ってきたとのことで、ランクが一気に上昇したのはセルビアで行われた国際大会で優勝した結果が反映されたためです。
2位の羽生善治氏は言わずと知れた将棋のプロ棋士で、歴代最強の棋士ともいわれている方です。趣味の一つとしてチェスを嗜んでおり、国内ランキングでも長らく1位の座についていました。
2019年現在はチェスでは非アクティブプレーヤーとなっています。
詳しくは個別のページにて→チェスプレイヤーとしての羽生善治
3位の小島氏は麻布中学・高校でチェス部に所属し、高校時代に歴代最速でチェスの日本チャンピオンになった方です。
国内トップチェスプレイヤーとして全日本チェス選手権で何度も優勝しており、2014年12月にはインターナショナルマスター(IM)のタイトルを得る権利を獲得、無事申請が承認されたため日本で2人目となるIMとなりました。(1人目のIM獲得者は日本ランキング6位の南條氏)
詳しくは個別のページにて→最年少日本王者の小島慎也とはどんなチェスプレイヤーなのか
日本ランキングの上位には羽生氏以外にも将棋のプロ棋士の青嶋未来氏が国内ランク4位にいます。
また国内ランク7位には永世名人資格保持者である森内俊之氏もいます。
将棋とチェスは似ている部分が多いため、将棋のプロ棋士がチェスも強いというのは理解できますが、本業の合間に趣味でやっている彼らがナショナルランクでトップ周辺にいるというのはプロ棋士のポテンシャルの高さに驚かされます。
ちなみに9位のワタナベアキラ氏は将棋の永世竜王の渡辺明氏とは別人で、漢字だと渡辺暁さんです。
最新の日本ランキングについては以下の記事で解説しています。
→【2020年最新版】日本のチェスのレートランキング【昨年1位の中学生は!?】
FIDEにおけるEloレーティングの計算
公式には大会毎にまとめて計算する方法や試合ごとに計算する方法などどれを使っているかは分からないので何とも言えませんが、簡易版であれば式に数値を代入していくだけでできるので、数式にアレルギーさえなければ簡単にできます。
また自分でやらなくても簡易版のレーティング計算はFIDEのホームページの以下のページにて行うことができます。
https://ratings.fide.com/calculator_rtd.phtml
上のページで使われているEloレーティングの計算式は以下の通りです。
Rnew:新しいレート
Rold:古いレート
K :係数
X:勝敗値 勝ちなら 1 負けなら -1 引分けなら0
Y:相手のレート
Kは発展係数(development coefficient)というもので自身のレーティングや試合経験数、年齢などで異なります。
K = 40 : レーティング戦30戦以下、または18歳以下でレーティング2300以下の場合
K = 20 : 早指しの場合、またはレーティング2400以下の場合
K = 10 : レーティングが2400に到達したことがありその近辺のレベル以上をキープしている場合
計算できる範囲は自身のレート±400であり、それ以上の差がある場合は計算式の性質上計算することができません。
ちなみにEloレーティングはレート差によって対戦をする前からおおよその勝率が分かります。
例えばレートが200下の相手に勝てる確率は75%程度、400で90%程度です。
これはチェスだけでなく他の競技でも同様で、ボクシングやテニスといった1対1で勝負をするものであればほとんどの場合に選手ごとのレーティングの計算と勝率を求めることができます。
そのような競技の場合、公式非公式問わずレーティングを計算し公開しているホームページがほぼ確実にあるので興味があれば探してみてはいかがでしょうか。
関連ページ:チェス・将棋のランキング記事一覧