1996年および1997年に行われた世界チャンピオン(当時)のガルリ・カスパロフ対Deep Blueの対戦についてです。
ガルリ・キモビッチ・カスパロフは、旧ソ連のバクー(現在のアゼルバイジャンのバクー)出身のチェスプレイヤーです。
彼が世界で有名になったのはやはりIBMのスーパーコンピューター&チェスソフトである「Deep Blue」との対局でしょう。
この2者の対局は1996年、1997年の2回にわたり行われています。
どのようなルールで、どのよう内容で決着したのか、詳細を見ていきましょう。
対局ルール
対局数と勝利条件
全6局。
1996年は第1局目の白番がDeep Blueで、1局ずつ先後を入れ替える。
1997年は第1局目の白番がカスパロフで、1局ずつ先後を入れ替える。
勝ちを1pt、引き分けを0.5pt、負けを0ptとして、6局終了時の合計点が多い方が勝ち。
持ち時間
FIDEのクラシカル。
具体的には最初の持ち時間が120分、40手目で120分が追加され、60手目で60分が追加され、以降の追加はありません。
1手毎の追加時間はないので、合計5時間を使い切った場合には時間切れで負けとなります。
関連ページ:【ルール】チェスの持ち時間【スタンダード、ラピッド、ブリッツ、フィッシャー方式】
賞金
1996年:勝者が40万ドル
1997年:勝者が70万ドル
参考外部リンク:World Chess Champion Garry Kasparov loses game to Computer
結果
1996年
カスパロフから見て3勝1敗2分でカスパロフの勝ち。(4pt-2pt)
この対局では現役の世界チャンピオンが史上初めてコンピューターに単一の対局で負けました。
1997年
カスパロフから見て1勝2敗3分でDeep Blueの勝ち。(3.5pt-2.5pt)
この対局では現役の世界チャンピオンが史上初めてコンピューターにタイトル戦方式の合計で負けました。
棋譜
1996年第1局
- 先手:Deep Blue
- 後手:ガルリ・カスパロフ
- 戦型:シシリアン・ディフェンス
カスパロフが単一の対局で初めてAIに負けた対局です。
敗着は黒32手目のRe8です。そこまでは若干白が有利なものの、まだ互角と言える程度の差でしたが、Re8で一気に白が優勢になりました。
この年はカスパロフがトータルで勝ち越しているので、まだ人類がAIに負けたという風潮ではありませんでした。
1997年第6局
- 先手:Deep Blue
- 後手:ガルリ・カスパロフ
- 戦型:カロ・カン・ディフェンス
世界チャンピオンがトータルで負け越すのが決定した世紀の対局です。
この対局の結果は世界中のマスコミで大きく取り上げられました。
敗着は黒7手目のh7と言われており、次の白がナイトをサクリファイスする手でカスパロフは虚を突かれて混乱してしまい形成を崩したそうです。
ただし最新のAIエンジンであるstockfish10での解析では、サクリファイスの手自体は想定内であり、その時点では差は付いていません。
その後の黒9手目fxe6あたりから徐々に差がついていき、黒14手目のKc8で黒番の形成が一気に悪くなりました。