チェスにおいてスキュアとは、直線で動ける駒(クイーン、ルーク、ビショップ)で相手の二駒を串で指すかのごとく狙う攻撃方法のことです。
ピンとよく似ていますがそれら二つの違いは、狙っている二駒のうち後ろ側(間接的に狙われている駒)の方が価値が高い場合はピン、前側(直接狙われている駒)の方が価値が高い場合はスキュアと呼ばれます。
この二つは駒の動き方ではなく駒の配置状態の名前となります。
スキュアの効果
スキュアは直接狙っている前側の駒ではなく、間接的に狙っている後ろ側の駒を狙う攻撃方法です。
スキュアされてしまったプレイヤーは前側の駒の方が価値が高いため「取られては困る」と逃げますが、その代わりに後ろ側にいる駒を取られてしまいます。
同じように見えるピンの場合は、前側の駒の動きの制限が目的でしたのでここが大きな違いとなってきます。
スキュアの種類
スキュアには大きく分けて絶対スキュア(absolute skewer)と相対スキュア(relative skewer)の2種類に大別されます。
絶対スキュア
スキュアにより直接的に狙われている駒がキングの場合を絶対スキュアと言います。
この場合直接狙われているキングは逃げるしかありませんので後方の駒は”絶対”に取られてしまいます。
相対スキュア
スキュアにより直接的に狙われている駒がキング以外の場合を相対スキュアと言います。
絶対スキュアとは違い直接狙われている前の駒は逃げる必要性はありませんが、逃げなければ後ろの駒よりも価値の高い前側の駒を取られてしまいます。
具体例
具体例を挙げてみましょう。1989年に行われたナイジェル・ショート(Nigel Short)とラファエル・バガニアン(Rafael Vaganian)のグランドマスター同士の試合で表れた形です。
簡潔に説明するためスキュアに関わる駒以外を排除し必要な駒のみを表示しています。
白がビショップをe5に移動させてサクリファイス(将棋で言う捨て駒)をしたところです。
このビショップを取らずにキングが逃げた場合はスキュアとなりますが、普通は取るので一般にこの場合はサクリファイスという状態です。
黒はこれを取らなければ後ろのクイーンが取られてしまうのでビショップをキングで取るしかありません。
しかし次の一手が白の狙いです。
クイーンでスキュアが決まりました。絶対スキュアなので黒はキングを逃げるしかありませんが代償としてクイーンを取られてしまいました。
結果的にビショップとクイーンの交換となったため白が大きく優勢を築けました。
関連ページ:【チェスの手筋】ピン(ピンアップ)【田楽刺し】
スキュアの名前の由来
スキュア(skewer)とは串の英名で、バーベキューなどで刺してるあれです。また「串で刺す」という動詞としての意味もあります。将棋の「田楽刺し」とネーミングセンスが同じあたりは日本人も欧米人も考えることは一緒なんですね。