アメリカのグランドマスターであるヒカル・ナカムラ(中村光)についてです。
チェスのグランドマスターの対局をいくつか見ていくと、必ずこの人の名前を見かけることになります。
「日本人でもチェスがこんなにも強い人がいるんだ」と最初は思ったものですが、調べてみると彼は生まれは大阪の枚方市ではあるものの、日米のハーフで3歳の頃にはアメリカに移住している日系のアメリカ人でした。
しかし彼の名をよく見るのは我々が日本人で、彼が日系のアメリカ人だから印象に残っていると理由よりも、ヒカル・ナカムラが世界的に見てもトップ10に入るレベルの有名選手だからというのが大きな理由です。
そんなヒカル・ナカムラとはどのようなチェス選手なのでしょうか?
米国グランドマスター最年少記録更新
ヒカル・ナカムラは7歳の頃に義理の父にチェスを教えてもらい、彼のチェス人生は始まりました。
彼の両親は3歳の頃に離婚し、ナカムラは母親に連れられて渡米、母の再婚によりスリランカ人の義父ができたのですが、その義父がFIDEレートで2200(もし日本国内ならトップ10レベル)というかなりのチェスの腕前の人だったのです。
注:FIDE=国際チェス連盟、各国のチェス団体を仕切るチェス業界で一番権威があって有名な団体。チェス界の国連みたいなもの。
その後めきめきと実力を伸ばしたナカムラは米国チェス連盟が定めるチェスマスターというタイトルを史上最年少(当時)の10歳で獲得、FIDEが定めるグランドマスターを当時の米国人最年少記録となる15歳79日で獲得しました。
この記録は偉大な世界チャンピオンとして知られるボビー・フィッシャーが保持していたアメリカ記録の15歳6か月と1日を更新するものでした。
米国チャンピオン5回
2020年現在、米国にはスタンダードルールでの世界トップクラスの選手がナカムラ(18位)の他にファビアーノ・カルアーナ(2位)、ウェズリー・ソー(7位)、ライナー・ドミンゲス-ペレス(14位)など何人もいるため、米国選手権は世界の国内選手権の中ではかなりハードな部類に入ります。
これらの並みいる強豪を倒して2019年にも米国選手権では優勝しており、その優勝を含めて5度のアメリカチャンピオンになっています。
その中でも特に2005年の米国選手権での優勝は、ボビー・フィッシャー以降では最も若い米国チャンプ獲得ということで、彼のチェスの才能がいかに早くから開花していたかを物語っています。
RAPID・BRITZルールで世界1位
ヒカル・ナカムラは長時間の試合でも強いのですが、持ち時間の短い早指しで特に強いことが知られています。
チェスのルールでは持ち時間毎にスタンダード(またはクラシカル)、ブリッツ、ラピッドの3種類が大まかに用いられます。
関連ページ:【ルール】チェスの持ち時間【スタンダード、ラピッド、ブリッツ、フィッシャー方式】
10分以内のブリッツ(BRITZ)、60分以内のラピッド(RAPID)、そしてそれより長いものは全てスタンダード(STANDARD)です。
FIDEではこれら3つそれぞれについてレーティングを発表しており、ヒカル・ナカムラはラピッドとブリッツルールのレーティングができた2014年にこの二つで世界王者のマグヌス・カールセンを抑えて1位となりました。
またこの記事を書いている2020年現在でもBRITZで1位、RAPIDで5位となっています。
ちなみにスタンダードでも過去最高位は2位であり、長時間戦でも世界トップクラスの強さを誇っています。
オンラインチェスでも当然1位
ヒカル・ナカムラはChess.comという世界最大のチェスサイトでほぼ毎日チェスを指しています。
Chess.comではグランドマスター達は基本的に本名で登録しており、ナカムラも例外ではなく本名で登録しています。
そして彼は3分切れ負けルール(ラピッド)で指しているのですが、当然彼に勝てるプレイヤーはほぼいないので常にランキング1位になっており、彼をChess.comで探すのは難しくありません。
参考外部リンク:ヒカル・ナカムラのページ | Chess.com
Youtube配信もしている
日本の場合には将棋実況のYoutuberというのはプロ・アマチュア含め何人もいます。
チェス界でも同じく、世界ではチェス実況のYoutuberをしているグランドマスターが何人もおり、ヒカル・ナカムラもその一人です。
彼は前述のChess.comでの3分切れ負けルールの実況がメインです。
実況者系Youtuberの例にもれずのナカムラもよく喋ります。
世界レート1位のBritzルールの対局を本人の解説付きで見れるのはかなり貴重だと思います。駒の動きは矢印などを交えて話していますので、英語が分からなくてもある程度何を言っているのかはわかります。
その他
人柄
ナカムラは大会会場などでファンの人と良く交流することで知られており、疲れていなければ大会終了後などに1分チェスの多面指しをすることもあります。
またファンサービスなのかどうかわかりませんが舐めプもたまにします。人間相手でもCPU相手でも。
対人間舐めプ:キングを無駄に上がる15:53~
対CPU舐めプ 白:Rybka 黒:ナカムラ
271手(将棋式の数え方だと542手)の末に無駄にビショップ5つで詰ますという舐めプの見本ですね。3分切れ負けのルールでCPU相手にこの舐めプができるのは世界でもこの人ぐらいです。
訪日
日本にも数年に1度程度は訪れているようで、過去には羽生善治名人(当時)とイベントで将棋を指した後に一緒にウナギを食べに行ったとブログで報告しています。
出典:https://hikarunakamura.com/japan-recap-2/
左からナカムラ、羽生、ナカムラ母、ジャック・ピノー(羽生・森内のチェスの師匠)。
ブログでは「将棋でぶっ飛ばされて一部はいい経験、一部はトラウマもんだったけど、そのあとハブさんにウナギレストランに連れて行ってもらってナイスなディナーを食べたよ」と書いています。
また日本食を紹介しながらチェスを指す動画もYoutubeに上げています。
最初に紹介するのがたこ焼きなのは彼が大阪生まれだからでしょう。
日本語
さようなら日本! いってきます!
Farewell Japan, see you again soon! pic.twitter.com/D2FRYgWJhp
— Hikaru Nakamura (@GMHikaru) March 13, 2017
彼が日本語を話している動画はありませんでしたが、ツイッターで簡単な日本語を使っているものはありました。
3歳以降米国に住んでいるのと、日本人の父ではなくアメリカ人の母と暮らしていたという点から考えると恐らく日本語は話せないか、話せたとしてもごくわずかだと思われます。
関連ページ:チェスプレイヤーの記事一覧