チェスのハメ手(トラップ、罠)で覚えておくべきものを3つ紹介します。
ハメ手を覚えておくというのは、相手をハメて勝つためではなく、どちらかというと自分がハメられて負けないようにするためです。
チェスのハメ手は長手数のものや出現確率が低いレアなものまで含めれば100種類以上ありますが、ここでは初心者でも覚えておくべき、比較的出現確率が高いものを紹介します。
白番用:リーガルトラップ
概要
イタリアンゲームから白番がチェックメイトまで持って行くハメ手の一つであるリーガルトラップについてです。
有名なハメ手ですが、白番も黒番もオープニングとしてはかなり自然な手が続くので、実践でも使う機会がありえます。
棋譜
- 1. e4 e5
- 2. Nf3 Nc6
- 3. Bc4 d6
- 4. Nc3 Bg4
- 5. h3 Bh5
- 6. Nxe5 Bxd1
- 7. Bxf7+ Ke7
- 8. Nd5#
各ムーブの解説
1~4手目
白3手目のBc4までがイタリアンゲームの基本形です。この後も黒4手目のBg4まではセオリー通りにお互いが駒を展開しています。
5. h3 Bh5
白5手目でh3と端のポーンを突きg4のビショップをどかしにかかりました。
ここが一つ目の分岐になります。
黒の手の正解はBxf3としてナイトを取る手ですが、普通なら問題ないように見えるBh5と下がってしまう手を指すと、次の白番の強手で白が有利になります(まだ勝敗が付くほどではない)。
6. Nxe5
この手が今回のハメ手のミソで、知らなければ指せない強襲手です。
ナイトで中央のポーンを取ります。
この手を知らない黒番からすればクイーンもナイトも取れてしまうので白がミスをしたと思ってしまいます。
6. … Bxd1
2つ目の分岐です。
一見するとビショップとクイーンの交換ができるので、普通は悩むことなくクイーンを取ります。
しかしここでクイーンを取ってしまうと実は詰んでしまうのです。
ここでの黒番の正解はe5のナイトを取ること。
そうすれば白のナイトと黒のビショップ+ポーンの交換で、白番がポーン一個分有利で済みます。
クイーンを取ると以下の手順で詰みます。
7. Bxf7+ Ke7 8. Nd5#
白はキングの斜め前の弱点部分にビショップを突っ込みます。ビショップにはナイトが効いているので黒は上に逃げるしかありません。
そして白が手前側のナイトをNd5と跳ねればキングの逃げ道も塞ぎつつチェックをかけてメイトとなります。
黒番用:ブラックバーンシリングトラップ
概要
イタリアンゲームの形から黒番が有利になるブラックバーンシリングトラップについてです。
白番がBc4としてイタリアンゲームの形が決まった瞬間にトラップを仕掛けます。
白番がトラップにかからず最善手を指すと、ポーン一個分ぐらい白番が有利になりますし、白番が最初のトラップにハマってもその後全て最善手を指し続ければ互角~黒番若干有利程度になるので、中級者以上で黒番を持った場合には指さないほうが良いハメ手です。
しかし初心者・初級者であれば必ずどこかで間違えるので、試してみる価値はあります。また相手もそう思っていますので対策をしておきましょう。
棋譜
- 1. e4 e5
- 2. Nf3 Nc6
- 3. Bc4 Nd4
- 4. Nxe5 Qg5
- 5. Nxf7 Qxg2
- 6. Rf1 Qxe4+
- 7. Qe2 Nxe2
- 8. Bxe2 Kxf7
各ムーブの解説
1~3.Bc4
- 1. e4 e5
- 2. Nf3 Nc6
- 3. Bc4
イタリアンゲームの形までの流れです。
3. … Nd4
トラップを仕掛けます。
Nd4として白がe5のポーンをタダで取れる状態にします。
4. Nxe5
白はここが分岐です。
最善手はNxd5として相手のナイトを自分のナイトで取る手ですが、e5のポーンがタダなのでこちらを取ってしまいます。
第一のトラップにハマってしまいました。
4. … Qg5
狙いの一手です。
e5のナイトとg2のポーンの両取りをかけます。白番は両方を受けることはできません。
5. Nxf7
ここが白は二つ目の分岐です。
f7の地点にナイトとビショップが効いているので、ここにどちらかを突っ込ませると良さそうです。
ビショップであればチェックができますし、ナイトであればクイーンの攻撃から逃げつつh8のルークをタダで取れそうです。
ここではナイトをNxf7とする方が駒損どころか駒得できそうなのでそちらを選びます。
しかしここでの正解はビショップBxf7です。ナイトを突っ込むと以下の手順でクイーンもナイトも取られてしまいます。
5. … Qxg2 ~ 8手目
- 5. … Qxg2
- 6. Rf1 Qxe4+
- 7. Qe2 Nxe2
- 8. Bxe2 Kxf7
5手目:黒番はg2ポーンを取りつつ、ルークのタダ取りを狙います。
6手目:白はルークのタダ取りは困るのでキングの隣に移動させます。黒はe4ポーンを取りながらチェックをかけます。
7手目:白のキングは動けないので合駒して守ります。ビショップかクイーンをキングの前に動かすのですが、ビショップだとNf3までの一手詰みなので、クイーンで守ります。黒は当然ナイトでクイーンを取ります。
8手目:e2のナイトがどけるとクイーンのディスカバードチェック(空き王手)がかかるので、ビショップでナイトを取ります。黒はそのすきにf7で忘れられてそうな黒のナイトを取って、完全に駒得の状態を確保します。
白番の5手目の正解手順
トラップにハマった後の白番の5手目以下の正解手順はビショップで突っ込んでキャスリングです。
この手順であればナイトとポーン2個の交換なので黒番が若干有利程度の差で収まります。
黒番用:釣り竿トラップ
概要
よくあるルイ・ロペスの形から黒がナイトのサクリファイスからの詰みを狙うトラップです。
これも白番がきちんと指せば有利になります。
今回出てくる端から攻めての詰みは、他の形からでも出てきますので、トラップとしてだけでなく攻め方の一つとしても覚えておくとよいでしょう。
棋譜
- 1. e4 e5
- 2. Nf3 Nc6
- 3. Bb5 Nf6
- 4. O-O Ng4
- 5. h3 h5
- 6. hxg4 hxg4
- 7. Ne1 Qh4
- 8. f4 g3
- 9. Qh5 Qxh5
- 10. fxe5 Qh2#
各ムーブの解説
1~4.O-O
ルイロペスのベルリンディフェンスと呼ばれる定跡手順です。
黒3手目はa6が一番メジャーですが、Nf6もその次に多い手です。
白番は4手目でキャスリングをして、駒の展開も防御も問題ない形になりました。
4. … Ng4 5. h3
黒番Ng4、これがトラップの準備の手です。
白番から見ると、h3とすれば黒のナイトを元の位置に戻させて手損させられるように見えるので、h3を突きたくなります。
ただここでの白番h3という手自体は悪い手ではありませんので、普通にそれを選択します。
5. … h5
そしてこれがトラップの手です。
ナイトを逃げずにポーンを突いて支えます。このままではナイトとポーンの交換なので黒番が駒損してしまいます。
しかし白番がナイトを取ると一気に形成が黒番に傾きます。(まだ詰まない)
6. hxg4 hxg4
白番の一つ目の分岐です。
白番からすればナイトとポーンの交換なので取らない手はないように見えます。
しかしここでナイトを取るのは悪手、そこは放置してc3などから駒の展開をしていけば白は有利を取れます。
ここでは何も知らないとして白は黒のナイトを取って、黒番がポーンで取り返す流れで進めます。
7. Ne1
白番の二つ目の分岐です。
黒のポーンの攻撃判定がf3のナイトに当たっていますのでよけたくなります。
しかしナイトを逃がすと白は詰みます。
なので正解はナイトを放置したまま、他で駒を展開する手順を考えます。その手順であればかなり不利ではありますが、白もまだ戦えるぐらいの差で済みます。
ナイトを取ると以下の手順で詰みます。
7… Qh4から詰みまで
- 7. … Qh4
- 8. f4 g3
- 9. Qh5 Qxh5
- 10. fxe5 Qh2#
Qh4の手が見えればあとは難しいところはありません。
関連ページ:【チェス定跡】オープニングの一覧